楽曲懸賞問題・・・第5問 / 正解発表と第6問の設問
楽曲懸賞 / 第5問---正解者 | 会員番号:35 高橋由江さん |
ご記憶に新しいことと思いますが高橋さんはすでに第1問、第4問の懸賞問題の正解を成し遂げています。第5問も加えると3度目の快挙です。この曲はデンマーク王立図書館のアーカイヴに掲載されていないものでした。CDにも録音はされていないし探すのは非常に難しいことと予想していまいました。出題をした時点ではこの曲はIFKSサイトのロンド視聴ページにまだアップロードされていませんでした。曲と楽譜を結びつける唯一の手段はDan Fogのカタログだったのです。そこでヒントとして「この曲は残念ながらデンマーク王立図書館のアーカイブに登録されていません。クーラウはこのオペラを題材にしてフルートとピアノのための曲を何曲か作曲しています。」を付け加えました。フルート曲で一つのオペラを題材にして何曲も作曲したものはオンスローのオペラ「行商人」しかありません。Op. 94の変奏曲、Op. 98aのイントロダクションとロンド、Op .99の変奏曲です。このヒントからオンスローという作曲家が浮かび上がったら、オンスロー関係のピアノ曲を検索すれば良いのです。それに該当するものは2曲しかないのです。その内の1曲はOp. 98bのOp. 98aの「イントロダクションとロンド」のピアノソロ・ヴァージョンです。しかし、この曲は懸賞問題のMP3の曲と明らかに異なります。残るはOp. 96しかないのです。
今回の回答はなかなか寄せられず、このままでは迷宮入りになることが心配されました。そこでこの曲をロンド視聴ページに人知れずアップしたのです。熱心な方なら必ず見つけられる状態になりました。その熱心な方が高橋さんだったのです。正解、おめでとうございました。
因みに第5問の正解は出題後ちょうど丸1ヶ月かかったことになります。
オンスローのオペラ「行商人」は当時フランスでポピュラーなものとなり、デンマーク王立劇場で1828年10月28日にオリジナルのフランス語からデンマーク語に翻訳されて初演されました。恐らくクーラウもこの上演を聴いたことと想像します。作曲年が1828年頃とされていますが、作曲の日時はこの初演後行われたのか、上演前にすでに完成されていたのかは不明です。
正解:
RONDEAU
BRILLANT
sur un Thême favori de l'Opéra
LE COLPORTEUR
composé par
F. KUHLAU
Oeuv. 96
愛好されたオペラ『行商人』の主題による華麗なロンド 作品96
イントロダクションについて
クーラウのピアノのためのロンドには51曲あります。その内ロンドの前に導入部のイントロダクションが用いられているものは20曲あります。その長さは長いものもあり短いものもあり様々です。ロンドが小規模のもの(Leichte Rondo)には用いられる場合は全くありません。イントロダクションは初期の作品には殆ど見られず1826年のOp. 73 No. 1に初めて現れます。イントロダクションは次のロンドを導くために置かれるものですが、ロンドとの関係は調性、テンポとの対比に留意され作曲家の創意によって自由に作られる場合が殆どです。
Op. 96のイントロダクションは22小節ありドラマチックです。
なお、ロンドの主題はオンスローのオペラ「行商人」の第3幕No. 11 Duett & Chorの "C'est la fête du village" 「さあ、村のお祭りだ」による主題が用いられていますが、第2主題(ロンドソナタ形式で書かれていますからそう呼びます)は序曲の中にあるものです。この二つのメロディを融合させて機能的にまとめたクーラウの手際は見事です。
(注)第6問はこのページの下方に掲載しています。