生者の国(The Land of the Living)

    スティーヴン・ボーリシュ著

      難波克彰:監修
      福井信子:監訳

      2011年6月20日発行
      出版社:新評論
      定価(本体5000円+税)

      推薦文(元デンマーク大使・岡田真樹)
       デンマークはかってイギリスをも傘下に置いた北欧大帝国を築いていたが、19世紀の相次ぐ敗戦で、世紀半ばには何の資源ももたない弱小国に転落してしまった。しかし、残された国民と国土の能力を最大限に生かすことで、一人当たりGDPはいまや日本を3割も凌駕する。1990年代から長引く経済の低迷に追い打ちをかけた東日本大震災。中国などの勃興を目のあたりにして、多くの日本人は自分たちの行く末を悲観している。しかし、今こそ膨張型、資源浪費型文明から決別し、子々孫々まで幸せに生きるパラダイムを打ち立てるチャンスではないか。パラダイムを大転換することで、破滅の底から目を見張るような飛躍を遂げたデンマーク。北海道と同じ550万人が、北海道の半分程の国土に住む小国にも関わらず、世界で一番幸福を感じている国民であり、海運、環境、バイオ、IT、さらには家具や畜産分野でも世界をリードしている。そこにある日本再生のヒントが、この本で詳細かつ雄弁に論じられている。



                                    

       


       デンマークの文化の黄金時代(1800〜1850年)と呼ばれる時期に活躍した文化人の一人に教育思想で有名なグルントヴィがいます。 グルントヴィの教育思想はデンマークのみならず諸外国にも大きな影響を与えました。勿論、日本もその例外ではありません。著者はデンマークのグルントヴィ・フォルケホイスコーレについて研究したアメリカ人です。原著は1991年に出版されたものですがその内容は現在でも多くの示唆に富むものです。IFKSはクーラウ研究が主体となっていてデンマーク文化黄金時代の音楽事情には詳しくなっていますが、本書によって別の視点から社会背景を知ることにもなります。どうぞお手にとってお読み下さい。(石原)