無名塾『ウイリアム・シェイクスピア』 公演・音楽作り奮戦記(石原利矩)
IFKS会報14号に記載の以下の文章に音源を入れました。以前本サイトの「無名塾『ウイリアム・シェイクスピア』 公演終わる」のページでお聴きいただいたものは省略形でした。このページではMax Takano氏、Tossy氏の演奏したものをMp3で全てお聴き頂ける様に音源を当て嵌めました。楽譜は途中までの場合もありますがご了承ください。
永年、サイトに動画を入れることは管理人の夢でしたが、やっとこのページに入れることができました。これはゲネプロの収録から音楽が付けられたシーンを抜き出したものです。この動画は携帯のスマートフォンで見られるようになっています。ただし、容量が大きいので機種によっては動作がスムーズに行かないかも知れません。Mp3の音は音楽のみですが、動画では演劇の中でそれがどのように用いられたかお分かりになると思います。
なおページの最後に以前掲載していたゲネプロの大きめの写真があります。併せてお楽しみください。
ボイエ作、クーラウ作曲・戯曲『ウイリアム・シェイクスピア』が2013年5月18日〜25日、吉祥寺シアターにおいて、劇団「無名塾」の主催で上演されたことは皆様すでにご存知のことと思います。 2012年秋のことです。演出家の杉本凌士氏から「この度、無名塾の公演でボイエ作、クーラウ作曲の『ウイリアム・シェイクスピア』が上演されることが決まりました。ついては音楽についてご相談したい。」とのお話しでした。 開幕前の音楽 30分 今回の上演では演劇の中身を休憩無しで通し、2時間以内に収めることは杉本氏の最初の考えでした。この中でお客様にできるだけクーラウの音楽を聴いていただくためにはどうしたらよいだろうかと考えました。幸い、杉本氏の演出では開場と開演の30分を演劇の一部分にするため、この時間に音楽を流すということとマッチしました。会場の入り口を開けると同時に序曲が流れ、その後開演の時間までピアノ曲で埋め、開演時間きっかりに「導入の曲」が始まるというもので、ピアノ曲の間に俳優が三々五々ステージ上でこれから始まるドラマの準備運動をするという設定でした。
FanfareEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
Piano music→OvertureEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m これについてここでマックス・鷹野氏のことをお話ししなければなりません。私がオーケストラの音色で途方に暮れていたことは前述しました。LogicProでできうることを試みました。楽器の音色にいろいろなデータを付け加えても考えているような音が再現されません。時間はどんどん流れます。年が暮れ、年が明け、1月、2月、なっても出来上がりません。3月4日から稽古が開始されることになっています。果たして5月の公演に間に合うだろうかと心配になりました。私の能力の限界がはっきりと見えてきたことを告白しなければなりません。こんな状況を神様は見ていたのでしょう。3月の初旬に無名塾の須賀さんから電話がありました。デジタル音の専門家がいることを。天の声とはこのことでした。この方は鷹野雅史さん(マックス・鷹野という別名を持つエレクトーンの大家です)といって、たまたま今回の配役のシェイクスピアの恋人役アンナ(鷹野梨恵子さん)の父君であるとのことでした。早速お目にかかる段取りをして3月11日にアポイントをとりお話しをさせて頂きました。私の行き詰まった悩みを聞いてくれて、私の編曲したものを聴いてすぐさまエレクトーンで再現して下さったのですが、それは見事と言う他ありませんでした。オーケストラの部分を「エレクトーンの音で作りましょう」と請け負ってくださった時はどんなにホッとしたことか。4月12日に二度目にお会いしたときは杉本氏、加藤氏も同道してもらいエレクトーンで『シェイクスピア』序曲を聴かせてもらいました。全て暗譜で全曲を弾き終わったとき、我々3人は思わずブラボーの拍手をしてしまいました。序曲を開演前の30分の最初に置いたら一体何人の人がこの素晴らしい演奏を聴き逃してしまうだろう、お客様が詰めかけてきた後ろの時間に流さなければもったいないと言うことになり、短いファンファーレを作って頂いて、その後ピアノ曲、序曲という順番にすることに決めました。こう決めたのが公演の1ヶ月前のことだったのです。 無名塾の稽古は3月4日から始まりました。第2回の本読み3月6日に顔合わせと言うことで俳優の皆様に初めてお会いしました。この時点ではこの演劇がどのように形作られるかは未だ見えていませんでしたが、若い俳優たちの熱意を強く感じました。紹介され、挨拶をしたときに「皆様、クーラウのことをご存知でしょうか」と聞いてみました。一人だけ「ソナチネ」という言葉を返した人がいましたが殆どの人にとっては無知の作曲家だったのです。「クーラウの音楽で、演劇を支えられるような音楽を作るつもりです。」と挨拶をしたように覚えています。この時点で自分自身でもどんな音楽になるか分かっていませんでした(鷹野氏とお会いしたのはこの日の後です)。
IntroductionEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
導入の音楽の最後のところでステージに最後に残ったウイリアム(準備体操の他の俳優はこの時点で全て退場しています)のところにティタニアとアルフが現れ若者を見守ります。この劇は妖精の世界のオベロン、ティタニア、アルフは人間界の者には見えないのです。暗転
William on stageEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
前半はOp.54ビアンキ作曲「カンツォネッタ」Var.12. T.387-397
ピアノソナタOp.30-II T.66以降 (所々に挿入句が入っています) ウイリアムとアンナが森で逢い引きしているところに、意地悪な領主と家来に言いがかりをつけられ、あわやというところで狩人の角笛の音が聞こえてきます。これはオリジナルにあるものです。オーケストラ音(ホルン)
Horn of hunterEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
『ウイリアム・シェイクスピア』第3曲 (a) 合唱 二人の危機を救ったのはティタニアの計らいでした。ティタニアとアルフがうまく行ったことを喜ぶ場面です。これもオリジナルにあるものです。オーケストラ&女声合唱の音
joyful Titania and alfEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
『ウイリアム・シェイクスピア』第3曲(b) 合唱
Friend from LondonEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
ピアノソナタ 作品30第4楽章 (実際は途中で切られました) 第2幕第2場
3 MastersEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
ハザウエイ卿「一人は学を鼻にかけるが気立ては良くて少々頭が足りぬ。かつて陪審の第一審判だったことが忘れられぬ奴。〜ポロン、ポロン、ポロン、ポロン!〜2番目の親方は若くして未亡人になった、この町初めての女親方だが、今は織物の目利きより、酒の目利きの方が本職だ.ワインが良ければ、我が息子を悪いようにはしないだろう。〜ポロン、ポロン、ポロン このポロン、ポロン、ポロン、ポロン!というのは以下の音型で
これほど緻密に計算したのに、残念なことにたった一度だけ音の入りが遅く(音響さんの手違い)うまくいかなかった時がありました。それは初日でした。後で音響さんが頭を抱えていましたが-----その他のステージは全てバッチリでした。この場面が終わると毎回ホッとしたものです。 ピアノ音
オペラ『魔法の竪琴』第6曲 パンフィルスのアリアより ウイリアムは織物職人徒弟になることを許されました。と同時にアンナとの結婚も許されました。しかも今日!
Thanks to GodEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
オペラ『ルル』第1幕 光の精の合唱 第3幕第1場 オリジナルはオーケストラと混声合唱です。なお、今回は歌を俳優が歌うというものです。本来は混声四部ですがその内のソプラノ旋律をみんなで一緒に歌うと言うことになり、歌詞も替えなければなりません。オリジナルのメロディは上記のようにB-Durです。このままの調性では最高音にg''が出て来る個所があります。全員が歌いやすい調は何調かを調べることもしなければなりません。ある日の稽古に立ち合いB-Dur,F-Dur ,G-Durの3種類の楽譜を用意し俳優の皆様に歌ってもらいました。やはりg''は無理と言うことが判明しました。どうもF-Durが良さそうです。そうすれば最高音はd''となります。
Wedding MarchEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
前奏のところからウイリアム、アンナが腕をつなぎ、その後に村人たちが続き入場してきます。このシーンがまさかこんなにうまく行くとは予想もしていなかったほど俳優の方々が練習して下さいました。アンナのお父さん、ウイリアムのお父さんが途中で一人で歌ったり、リフレインではウイリアム、アンナ、3人の親方のソロになったり、見ている人も一緒に歌いたくなるような場面でした。なお、後奏で鷹野氏のアドリブが入っているのですが、この部分はお客様の耳に達しないうちにフェードアウトしてしまったのです。それは鷹野氏も承知していたことですが、氏の茶めっぷりがこんなところに現れていたのはお客様は誰も知らないことだったのです。古関祐二作曲の甲子園・高校野球「栄冠は君に輝く」の音楽です。ただし、この行進曲はフィナーレのカーテンコールの後お客様の退場の際、一度だけ流れましたので最後まで残っていた人の何人かは聴いたかも知れません。 3幕1場 でした。これをご覧になって曲名がお判りになったら貴方はクーラウ名人です。ピアノ曲です。これを聴いた杉本氏は弦楽器の低い音域の荒々しい(ざらざらした)音で欲しいと言われました。そこで鷹野氏に演奏していただき次のようなものができました。 曲目の種明かしを致しましよう。ピアノソナタ6a-3-II モーツァルトの主題『魔笛』の「僧侶の行進」の主題による変奏曲から第3番の変奏です。 弦楽器の音 Allan's monologueEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m 杉本氏の演出では、ウイリアムに空鉄砲をけしかける二人の徒弟をアランが雇った者に作りかえています。そして犠牲となったのろ鹿をティタニアの化身とした杉本氏のトリックは劇の最後に絶妙に明らかにしています。 同幕、同場
Allan&2apprenticesEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
ピアノソナタ・Op.46-3-Iの動機で編曲 ピアノ音 第3幕、第2場 同幕、同場
Gilbert's adviceEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
音楽盛り上がり急に暗転。暗い中で音楽は続きクライマックスで音楽止む。次第に明転するとウイリアムの部屋。 第3幕、第3場
Anna & WilliamEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
皆様、ご存知の「Wanted Sherlock Holmes!」で有名になった?例の曲です。 第3幕第4場
by the River AbonEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
ピアノソナタOp.30-II T.66以降 先に来てアンナを待っている間にウイリアムは眠りに誘われます。夢の中でウイリアムは「マクベス」のシーンを見ます。オリジナルでは無言劇ですが杉本氏はここでセリフを入れ、スペクタクルなシーンに合わせ劇的な音楽を付ける演出に変えました。この場面は全て鷹野氏のオーケストラ編曲と演奏です。シーンが変わる事に雷鳴が鳴ります。
MacbethEmbed YouTube Video by VideoLightBox.com v2.5m
●3人の魔女の登場。バンクオー登場-----『ルル』より第3幕の嵐の音楽その1●ダンカン王の登場。マクベスがダンカン王を刺殺。-----『妖精の丘』序曲のファンファーレ ●マクベス夫人の登場 血の付いた短剣を持って呆然としているマクベスから剣を取りあげる。刺客バンクオーを暗殺-----『ウイリアム・シェイクスピア』序曲の旋律を用い編曲 ●臣下たちの感謝、バンクオーの亡霊、夫人のマクベスへの叱責、-----『ウイリアム・シェイクスピア』序曲の導入部の動機と『ルル』の嵐の動機を取り混ぜた編曲 ●3人の魔女、幻影1、幻影2、幻影3-----『ウイリアム・シェイクスピア』序曲のフーガの動機を用いた不気味な音楽 ●マクベス夫人 血塗られた自分の手を見て苦しむ-----『ウイリアム・シェイクスピア』序曲の冒頭の動機による劇的な音楽 ●敵軍勇士たち-----『ルル』の嵐 その2 ●マクベス(ウイリアムが扮する)決戦の決意-----『ウイリアム・シェイクスピア』の結婚式の旋律を朗々たる音楽に編曲 フェードアウトしてマクベスの独吟 ●マクダフ登場 マクベス(ウイリアム)と剣闘-----『ルル』の嵐 その3 マクベスの死と共に暗転、明転するとウイリアムが森の中で倒れている。アンナがやって来る。夢から覚めたウイリアムは今見た夢で将来詩人となる自信が湧く。二人は手を携えてロンドンに向けて旅立つ。 終曲 オーケストラ音
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『ウイリアム・シェイクスピア』の第8曲 合唱 かくして無名塾公演『ウイリアム・シェイクスピア』の音楽作りが終わりました。初めの不安も鷹野氏の協力を得られたことにより吹き飛びました。特に無言劇では約10分近い夢の場面で、鷹野氏はクーラウ作品から様々な部分を有機的に組み合わせて見事な音楽を作り上げてくださいました。
以下はゲネプロの記録です。この中の音源は省略ヴァージョンです。
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無名塾『ウイリアム・シェイクスピア』公演 日程:東京公演:2013年5月18日~5月25日 作品名:「ウィリアム・シェイクスピア」 作:カスパー・ヨハネス・ボイエ 翻訳:福井信子 登場人物 STAFF 「ウィリアム・シェイクスピア」の日程 |