IFKS協力の演奏会(2) カライドアクスティコンの演奏

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このページの1番下にワルツの楽譜があります。その場所にボタンがありますのでそこで操作して下さい。

 カライドアクスティコンの説明は大変難しく、理解をしてもらうのにいつも苦労します。そこで如何にわかりやすくお客様に伝えることができるか、演奏者全員で考えました。演奏会の中でカライドアクスティコンに予定された時間が15分、説明して、サイコロを振ってカードを選び出し,その演奏をするまでに果たして終わることが出来るかが心配でした。
遠くから見える大きなサイコロ、それを振る人が二人、投げ終わったサイコロをお客様に見せる人、サイコロを振る人に投げ終わったサイコロを手渡す人、その数字を記録する人、カライドアクスティコンの模型からカードを選び薄い箱の中で並べる人、譜めくりの人にも手伝ってもらうことにして準備が整いました。ピアノ演奏は初見に強い齋藤亜都沙さんが控えているので心強かったのです。当日ステージでこれに要した時間は15分をやや超過していました。しかし、お客様は真剣に聞いて下さり、メモを取る人も見られ、興味深く聞いて下さったようで、出来上がった曲の初見演奏に大きな拍手を下さいました。この曲はThe Waltz in Fukushimaとして後世に伝わわることでしょう。

プログラム冊子の中の説明文

カライドアクスティコンについて
 カライドアクスティコンは1820年12月14日付けのアドレッセ紙(デンマークの新聞)にその広告が出ました。これが世の中に現れた最初の情報です。
「カライドアクスティコンはフリードリヒ・クーラウによるピアノ奏者のための音楽的な娯楽である。それは楽譜が書かれたカードが小さな箱の中に収められたもので、サイコロを振ってカードを選び、沢山のワルツを作り出すものである。これはクリスタル通り50番地のリヒター&ベヒマン音楽商店で5リグスダーラーで求められる。デラックス版はもう少し高い。」とあります。
 その後(1821年2月24日)同新聞にローセ社(デンマークの楽譜出版社)の情報(カライドアクスティコンは前掲商店からローセ社が引き継いだというお知らせ)が出ています。その2日後にダーエン紙(デンマークのもう一つの新聞)に「カライドアクスティコンは3リグスダーラーとなり、説明書にも見られるようにこの考え深い創意はピアノ奏者のみならず作曲の練習や音楽的な知識を深くするものである。」という広告が出ました。
 カードは11枚が一つの束にひとくくりにされ、その束にはaからvのアルファベットが記されています。束は21種類(jはiと混同されやすいのではずされています)あります。これは21のカードでこのワルツができあがるからです。何故11枚かというとサイコロを2個を振って出た目を合計すると2〜12と言う数字になるからです(1はありません)。ですからaの束の最初のカードにはa. 2、2番目のカードにはa. 3と書かれています。そして順繰りに最後の11番目のカードはa. 12となります。一つのカードにはそれぞれ1小節(前後の関係で2小節にわたるものもあります)の楽譜が書かれています。
さてこれで遊ぶわけですが、1曲を完成させるには21回サイコロを振ることになります。こうして生み出されるワルツの可能性は11の21乗という天文学的数字になります。あなたはこの数字を日本語で読めますか?
7.400.249.944.258.160.101.211曲
兆(ちょう)、京(けい)を通り越して垓(がい=10の20乗)の世界です。

 このワルツは演奏すると約1分30秒ぐらいのものですが、生涯演奏し続けても終わらないでしょう。一体、何時間、何日、何年かかるか計算するにも普通の計算機では追いつきません。
さて、譜例をご覧いただけばこのワルツに関してご理解を深められるでしょう。
なお譜例にあるbund(デンマーク語) 、Bündel(ドイツ語)は「束」という意味です。

 

カライドアクスティコンのステージ上での説明 石原利矩

さてそれではカライドアクスティコンの説明をさせて頂きます。
カライドアクスティコンとはクーラウの作った言葉です。あまり、耳慣れない言葉ですが、kaleidoとはギリシャ語の
「美しい」という形容詞に由来しています。
カレイドスコープという言葉を思い出して下さると意味がわかります。カレイドスコープは「万華鏡」と言われ「鏡」ですが、カライドアクスティコンは鏡ではなくて「響き」です。
カレイドスコープは目のための楽しみ、
カライドアクスティコンは耳のための楽しみです。

21種類の「束」にそれぞれ11枚のカードが収められています。
2つのサイコロを振ってその合計の数字のカードを抜き取り,順繰りに並べて曲を作ります。

プラグラムの6〜14ページをご覧下さい。〔注:このページの下に掲載しました)
abcdefghiklmnopqrstuvの束があります。jが無いのはiと混同を避けるためです。
9ページのhの束に小さい音符で書かれているカードはデンマーク王立図書館に所蔵されている現物にこれが紛失しているからです。この実物がたった一つしか無いのが残念ですが、私もデンマーク王立図書館に行って閲覧しましたが、hの束には3枚しかありませんでした。これをデンマークのクーラウの研究家、ブスク氏が作曲して補充したものです。
aには11枚、bにも11枚と言うようにそれぞれのアルファベットの束には11枚が含まれています。何故11枚かというとサイコロ2つの合計数は2〜12の11種類だからです。1はありません。

その順列組み合わせの数はプログラムにあるような数字になります。
7.400.249.944.258.160.101.211(なな、よん、ぜろ、ぜろ----と最後まで数字を読み上げる)
これを日本語で読める方はいらっしゃいますか?(だれも手を挙げない)
----それでは私がこれを日本語で読んでみましょう。
74垓24京9944兆2581億6010万1211----です。〔フーというお客様のため息が聞こえる)
以下この数字を言うときは「74垓云々」と言います。

演奏時間は1分としてさて何日かかるのでしょうか。
1年は52万5600分、---- 1京(けい)の世界ですから地球の歴史46億年よりもはるかに永いことになります。
これに挑戦するのは本人の勝手ですが、一生かかっても演奏しきれません。多分ギネスブックには載ることと思いますが・・・〔笑い)

さて、試しにサイコロを振って全てが2が出たときの曲がどんなものかを作ってみましたが、これは16ページに出ています。
これをピアノで演奏してもらいましょう。

〜 演奏〔齋藤亜都沙さん) 〜 この曲はここを<<クリック>>すると聴けます。
(拍手)

それではいよいよステージでサイコロを振って本日のワルツを作ってみましょう。17ページに音符の書かれていない五線紙がありますが、ここにサイコロの数字を書き入れて下さい。楽譜を書き込む時間が無いと思われますので、これは後で皆様がお宅に帰ってから束から楽譜を選んで書き入れて下されば今日のワルツを再現することができます。
書くのに追いつかなかった人は帰りにホワイエに番号を掲示しますのでご覧下さい。

演奏順はAを2回、Bを2回、Aに戻り1回、それからCを2回、最後にAを1回の順で行います。

(ここで演奏者全員の見事な連携プレイで「サイコロ振り-読み上げ」が行われました。21回のサイコロ振りがお客様にとって冗長に感じられることがないようにスピードを上げました。2つのサイコロの和を間違えて読み上げたこともご愛嬌となりました。
21回の振りで選ばれたカードは
a.9 / b.3/ c.7/ d.7 /e.7 /f.8 /g.5/
h.6 / i.6 /k.6. / l.9 / m.7/n.8/o.2/
p.4/q.7/r.6/s.9/t.10/u.6/v.12

でした)

それではいよいよ本日、74垓云々より奇跡的に選ばれた1曲、
The Waltz in Fukushimaを演奏して頂きます。
〜 演奏〔齋藤亜都沙さんの初見演奏) 〜
(拍手)
 これは偶然性の音楽です。皆様がお宅でサイコロを振ってワルツを作ることができます。作曲家になったつもりでお楽しみ下さい。ただし打ち込みすぎて人生を棒に振らないようご注意下さい。〔笑い)
石原退場(拍手)




The Waltz in Fukushima

クリックしてお聴き下さい