すてきな話---その後(石原利矩)

「すてきな話---その後」

 昨年(2000年)コラムに掲載した「すてきな話」をお読みいただいた方も大勢いらっしゃることでしょう。森史夫氏は『ルル』の演奏会形式のコンサートをお聴きになりその時の感想を「BANK CARD」誌のご自分のエッセイの中で紹介して下さったのです。私は演奏会の当日はそんなことを露とも知らず、雑誌が発行された後にそのことを知り、電話で連絡を取りお話しをさせていただいたのです。その時、私が「いずれ『ルル』を本当のオペラでやりたいと思っています」と申し上げたら「もう、それしかないでしょう」と言われました。今年の7月某日、電話をしてから約1年後に執筆者の森史夫氏と初めてお目にかかりました。

 代官山のご自宅、兼設計事務所を訪ねました。温かく歓迎され楽しい時間を過ごしました。お仕事の建築設計のお話しを伺い、建築物を造る工程はちょうどオペラの上演の準備をすることとよく似ていることに気が付きました。今まで手がけられた建築物の写真や絵を拝見し、いろいろなことを教えていただきました。木造建築、特に「屋根」に関して情熱を注いでいらっしゃるそうです。「材と材をフィットさせる」というお考えも今までの作品からにじみ出ていたように感じました。

 エッセイの中でもスケッチがお得意なのは伺えましたが、実際に描かれたスケッチ帳を見せていただいてナルホドとうなずけました。今回そのスケッチ帳をお借りしてきました。ここに掲載することをお許し頂きましたのでその内の数点をご紹介いたします。

 目下、『ルル』の上演資金を集めるため奔走しています。今、ルルが欲しがっているものは「シディの愛」ではなくて「お金」です。しかし-----

 人生で一番大切なものは「友人」である------という言葉を耳にします。『ルル』にはお金が必要です。が、それ以上によき友を持つことを忘れてはいけないと思っています。勿論自分もよき友でありたいと思います。

 クーラウの導きは、はかり知れません。


インドの井戸(BANK CARD2001年2月号掲載)
戦勝記念碑(BANK CARD2001年2月号掲載)

紅葉渓の庭園(BANK CARD2000年12月号掲載)

大内宿(BANK CARD2001年4月号掲載)

 森史夫(もりちかお)氏プロフィール:1938年東京都に生まれる。日本大学理工学部建築学科卒業。東京工業大学助手を経て、東京造形大学教授。木造住宅を中心にランドスケープデザインなども手がける。1977年新制作協会会員。スペースデザインを毎年制作出品。著書に「自然感覚の木造住宅」(主婦と生活社)ほか。

 

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